このページでは、怒りの感情をコントロールするのが苦手な子どもへの対応について紹介しています。
怒りの感情が湧きやすい子どもの中には、発達障害をもつ子もいます。発達障害の中でも、怒りやすくイライラしやすいのがADHD(注意欠陥・多動性障害)とされています。ADHD以外の発達障害にも、健常児と比べると気持ちのコントロールが難しい場面があるため、必ずしもADHDと断定されるものではありません。
また、発達障害の特性として「気分を切り替えることが苦手」「予期せぬことへの対応ができない」というものがあります。そのような場面に遭遇したときに、どう反応していいかわからず急に怒ったり泣きわめいてしまうのです。
生まれたばかりの子どもは心も体も未発達で、授乳と排便を経験することで「快」「不快」の感情が芽生えるそう。例えば母親がいないと「不安」を、授乳のタイミングが遅いと「怒り」を感じ、いつもと違う姿勢だったり味がしたりと言った経験から「嫌悪」の感情を発達させていきます。
つまり、怒りに代表される「不快」な感情は、人間が最初に知った表現しやすい感情に該当するのです。
ADHDの子は多動な特性ゆえ頭がフル回転していることが多く、常に疲れている状態です。普段以上に疲れが溜まっているときは気持ちのコントロールがいつもより難しいことが多く、自分の気持ちをうまく伝えられないもどかしさが怒りの感情になって現れていると考えられています。
発達障害の子だけでなく、うまく自分の気持ちを表現できない場面では不安を感じやすくなるのが通常の状態です。伝わらない不安を打破するために、怒りという感情表現に繋がっていることがあります。
ADHDの子は起きていることにうまく対処できず、パニックを起こしがちな傾向があります。本人もどう対処していいかわからず、表現しやすい怒りの感情で周囲に状態を知らせようとするのです。
「イヤ」という感情と「怒り」をセットで覚えている状態だと、不快な感情を切り離して「イヤ」を伝えることが難しいでしょう。怒りで表現しているのは別の感情、という場合が往々にしてあります。
発達障害を持つ子どもが怒ってしまったときどうすればいいか?その対応を覚えておくと、子どもの怒りに適切に対応できるかもしれません。
怒っているときは興奮状態のことが多いため、うまく言葉にできません。そのため、まずは子どもの気持ちを落ち着かせる必要があります。落ち着いたら、子どもの気持ちを受け止めるために、じっくりと話を聞きましょう。最後まで話を聞いてもらえると、子どもも「分かってもらえた」と安心します。
子どもの気持ちを落ち着かせる方法として、次のような方法を試してみてください。
怒りをコントロールするためアンガーマネジメントという手法があります。
アンガーマネジメントは、怒らないようにすることが目的ではなく怒りの感情とうまく付き合っていくための心理プログラムです。アメリカで生まれた心理的アプローチ法のひとつで、最近は企業や子育てでも取り入れられているくらいポピュラーなものです。
ここでは、子どもに取り入れやすいアンガーマネジメントの方法をいくつか紹介します。
怒りの感情が出てきたら、まずは6秒待つように伝えましょう。一緒にカウントするのも良い手です。怒りが全部なくなるわけではありませんが、怒りの衝動を落ち着かせることができます。
人はイライラすると浅く呼吸するもの。深呼吸を数回繰り返すことで浅くなった呼吸が深くなり、でイライラした気持ちを落ち着かせる効果があります。子どもと一緒に深呼吸してみましょう。
目の前に怒りの原因があり6秒我慢してみても怒りが収まらないときは、その場から離れてみるのが効果的です。怒りの対象が視界から外れたり、違うことをさせたりすることで意識が変わりやすくなります。
普段から子どもがホッとできる場所を作っておき、怒りの気持ちが出てきたときはその場所に連れて行ってみましょう。安心感を思い出すことで気持ちが落ち着き、クールダウンします。
発達障害の子どもは、自分がイライラしていることに気づいていないことがあります。子どもに「どうしたの?」と聞いてみて、自分の気持ちと向き合う時間を作ってあげてください。そのあとは「少しお休みしようか」と促してみて、フル回転している脳に休息を与えるのも良い手です。
文字や絵を書けるお子さんには、イライラした原因を紙に書かせる方法も使えます。自分の内側にあるイライラを外に出す(外在化)させることで、少しずつ落ち着く場合があります。また、それまでと違う行動に移行することで興味の対象がかわることも。イライラがある程度おさまってから話をすると、子どもも自分の気持ちを伝えやすくなります。
怒りの感情は誰しもが持っているものです。他者からの理不尽な行動に怒りで対応するからこそ身を守れる。人間が生きていくために必要な感情です。無理になくそうとするのではなく、怒りの感情に早めに気づき気持ちを落ち着かせる行動パターンを用意しておくことが大切です。
疲れが溜まっているときは、気持ちのコントロールが難しいことが多いとされているため、休息を心がけ子どもがリラックスして過ごせる空間を作るとよいでしょう。
発達障害のある6歳の息子。小さい頃から感情のコントロールが苦手で、イライラしたときに気持ちがたかぶったまま暴言を吐いてしまったりパニックになったりしていました。
怒ってしまう息子も辛いのだろうと「カーッときたら10秒数えること」、「その場をとにかく離れること」などいろいろな方法を試してみました。その中で1番効果があったのは、「その場を離れること」でした。しかし、その場から動けないような状況のときにパニックになってしまいます。そんなとき、息子が考えたのは「遠くの景色をみながらそこにあるものを読み上げていく」というもの。すぐに離れられない場所でイライラしてしまったとき、息子は自分でアンガーマネジメントの方法を見つけていたのです。
発達障害の子どもの感情コントロールは、怒っちゃダメというだけでは行動改善にはつながりません。こういう場合は、代わりの行動を提案するといいとわかりました。
ADHDと広汎性発達障害のある息子。心理士さんに勧められ親子のコミュニケーションがうまくいくようになるための対処法を学ぶペアレントトレーニングを受けてみることにしました。
ペアレントトレーニングで最初に聞いたことは、息子を怒らないで育てることでした。ADHDがある子は周囲に馴染めないことが多く、これまでもたくさん怒られてきている子が多いそうです。怒るのがお母さんだと、母親との信頼関係が築けなくなり反抗期には手がつけられなくなることもあるそう。「激しく怒っても、子どもの注意欠陥や多動・衝動性は治るものではありません。それよりも信頼関係を築いていくことの方が大切」と心理士さんに言われ、怒らず穏やかに伝えるようにしていったところ、息子からも大人しい返事が!また、遠くから声をかけるより目を見合わせて伝えたほうがしっかりと話が伝わるようになりました。
子どもが怒っているときに一緒になって怒ってしまうのは逆効果です。子どもの気持ちに寄り添い、ときにはクールダウンをさせることで子どもの怒りのコントロールを助けることができます。
また、放課後等デイサービスの中にはアンガーマネジメントを行っているところもあるので、相談してみるのをおすすめします。子どもの個性・特性に合った関わり方で、怒りの気持ちに向き合う方法を作り上げていきましょう。
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