このページでは、自閉症スペクトラム障害について解説しています。
以前は、自閉症や広汎性発達障害などと色々な呼び方でしたが、大きくとらえた新しい概念として「自閉症スペクトラム」という呼び方となっています。
この自閉症スペクトラム障害とは、生まれつきの脳の機能障害で、症状としては発達に遅れや凹凸が出てきます。
「自分の殻に閉じこもって引きこもる」というイメージを持つ方もいらっしゃるようですが、実際はそうではありません。自閉症スペクトラム障害は、3つの障害(特徴)を持つと言われています。
自閉症スペクトラム障害だからといって必ずしも知的障害や言語障害を伴うわけではありません。知的障害や言語障害を伴うこともありますが、軽度のものであれば成長とともに改善するケースもあります。
症状は様々ですが、同じ症状がずっと続くわけではありません。成長にともなって全く違う症状や行動が現れることも少なくありません。
英語では「Autism Spectrum Disorder」と呼ばれることから、頭文字をとって「ASD」とも呼ばれる障がいで、症状の度合いは個人差が大きいのが特徴です。
中には大人になるまで自閉症スペクトラム障害であることに気づかない程度の症状が軽い方もいれば、日常生活に支障をきたし社会で生活していくのが難しいほどの強い症状が出る方もいます。
症状の度合いや行動の特徴、知的障害や言語障害を伴うかどうかによっても、その子にとって最適な接し方は変わってくるので、自閉症スペクトラム障害は柔軟なサポートが求められる障がいだといえるでしょう。
自閉症スペクトラム障害についての研究は行われているものの、自閉症スペクトラム障害になる原因についてはまだ特定されていないのが現状です。しかし、わかっていることがあります。それは、育て方に問題があって起きる障がいではないということ。
病院で自閉症スペクトラム障害と診断されてしまうと、自分の育て方が悪かったのではないか、しつけが厳しすぎたのではないか、十分に愛情を与えられなかったからではないかなど自分を責めてしまう方がいますが、こういったことは関係ないとはっきりわかっています。
ただ、遺伝的な要因はあると考えられており、先天的な遺伝要因に加えて何らかの要因が加わることにより発症するのではないか?という説が有力です。
治療については、完全に治療することは難しいとされています。しかし、小さいうちから本人に伝わりやすいように接し方や伝え方を変えるなどをすれば発育を促すことは可能です。
自閉症スペクトラムを判断するうえで、「社会性」「コミュニケーション」「イマジネーション」の3つの症状があります。詳しく見ていきましょう。
マイペースで集団生活に合わせられないなどの特徴があります。年相応の常識を身につけるのが難しかったり、場の空気を読むのが苦手だったりするため、社会生活をするうえでの問題が出てきます。
まわりの人とのコミュニケーションがうまくいかなくて対人関係に支障が出ます。一例としては「呼んでも反応が薄い」、「気持ちを言葉で表すのが苦手」等が挙げられます。
また、言葉の裏側にある意味を理解できない特徴もあり、乳幼児期の言葉の覚えたてのときはオウム返しをすることで気づかれる場合もあります。
先を読む能力が劣っているために、新しい場面や人に対して臆病になります。目に見えない人の感情や未来のことなどに興味を示しづらいこともあります。こだわりが強くなり、自分の考えに固執してしまうことも特徴です。
その他の特徴として、感覚的な障害を持ち合わせていることもあります。光や音などに敏感に反応しすぎて日常生活に支障が出てしまいます。
このように自閉症スペクトラム障害は、脳の機能障害により様々な症状が出てしまいます。自閉症だけでなく、他のページで解説しているアスペルガー症候群やADHD、LDなども、このスペクトラムという大きな概念の中にいます。
知的な水準もそのお子さんによって違い、知的障害を併発している場合もあれば、高いIQの高機能自閉症と呼ばれるお子さんもいらっしゃるのです。
自閉症スペクトラム障害は脳機能障害なので誰でも発症するリスクがあります。 何がきっかけで子どもが自閉症スペクトラム障害であると気づくのでしょうか。
親が注意深く観察していても、なかなかその兆候に気づけないケースも珍しくありません。
まず、赤ちゃんの時期についてですが、この時期に物覚えが他の子よりも悪かったり、言葉が遅かったとしてもそれだけで自閉症スペクトラム障害とは判断できません。
個人差の大きい時期でもあるので、必要以上に心配しないようにしましょう。
一般的には3歳以上にならないと判断は難しいとされています。では、3歳以降にはどのような行動が見られるのでしょうか。 兆候として次のようなものが挙げられます。
例えば、「妙にこだわりが強い」というのも自閉症スペクトラム障害の兆候です。食事を並べた時にいつもと並べ方が違うと怒ったり、理解できなくなることがあります。
臨機応変に対応するのが非常に苦手です。一つ一つルールにして教えてあげると理解するものの、自分で考えて臨機応変に対応ができない子が多いのも自閉症スペクトラム障害の特徴だといえるでしょう。
また、意味のない雑談が苦手なので、なんでもない会話が続かなかったり、ちょっとした一言を発するのにものすごく頭を使うことがあります。子どもと話している中で、「ただ楽しくおしゃべりしているだけなのに何をそんなに難しく考えているのだろう…」という疑問から自閉症スペクトラム障害に気づくこともあるようです。
人の輪に入れないのも代表的な症状ではありますが、自分が何かを求めているときは積極的に関わることもあるため、「やっぱり気のせい?」と思うこともあるでしょう。
自閉症スペクトラム障害の兆候といっても、必ずしもすべての行動が見られるわけではありませんし、実際のところは詳しい診断を受けてみなければわかりません。
まずは医療機関や療育センターなどの専門家がいるところに症状を相談すると良いでしょう。発達検査や行動観察などから障害名や疑いの診断、適切な対処法などをアドバイスしてもらえるでしょう。
自閉症児者の親の心構え、と聞くとなんだが大仰な感じがしますが、心構えとしてできる第一歩はまず「自閉症という障害をよく知ること」です。
自閉症は個人によって症状の振り幅が大きい障害です。自閉症と一括りに考えず、その子に合ったケアが求められます。
一口に自閉症といってもその特徴は十人十色で特徴の出方も必要なケアも違うということですね。
どのようなケアをすれば良いのか理解するのはとても大変ですが、その子にとっての最適なケア方法を見つけることができたら、その子にとって居心地の良い暮らしができるだけでなく、サポートする側も楽になることは間違いありません。
その子に合った最適なケア方法を見つけるためにはまず、何をすべきなのか?それはその子の行動をよく観察することから始まります。
自閉症の子は、こだわりが強く、ちょっとしたことでもパニックになることも多いでしょう。しかし、それはなんの理由もなくパニックを起こしているわけではありません。パニックを起こすにはそれなりの理由があるのです。
子供が突然パニックを起こすとわけがわからない場合、親御さんもパニック状態になってしまいますよね。
親子でパニックに陥ってしまったら収拾のしようがありません。そうならないためにも日頃からお子さんの様子を観察し、どんな時パニックを起こしやすいのかをきちんと知っておく必要があるのです。
親御さんがパニックの理由をしっかり理解していれば、その原因を取り除くために冷静に対処することができるでしょう。
また、お子さんも親御さんもストレスを感じずに伸び伸びと過ごすためには、日常生活のルールを身につけるための訓練をすることが大切です。そのためには自閉症という障害と真正面から向き合うことが大切です。
「自閉症という障害を受け入れ、対峙すること」これも心構えのひとつと言えますね。日常生活のルールを身につける訓練は誤ったやり方をしてしまうと苦手なことが、より苦手になってしまう可能性もあるので、臨床心理士などの専門家に相談しながら行うことをおすすめします。
さらに、自閉症に関する施設やセミナーに参加するなどして、自閉症への理解を深めていくことも大切といえるでしょう。
自閉症に関わるもので「サヴァン症候群」という言葉を聞いたことはないでしょうか?これは自閉症に多く見られる能力の一種で、有能サヴァンと天才サヴァンにわけられます。有能サヴァンはその人の能力よりも突出した能力を持っている人のことを指します。
これは、あくあまでその人の平均よりも突出しているといえるだけであって他と比べてではありません。天才サヴァンはその能力が特に突出している人のことを指します。
芸術家の山下清氏しかり、映画『レインマン』のモデルとなったキム・ピークも驚異的な記憶力を持つサヴァン症候群でした。このように自閉症の人にはアンバランスともいえる能力の突出がみられがちです。
また、サヴァン症候群と関わりがあるのかはわかりませんが、自閉症児者には驚異的な集中力とこだわりがみられることがあります。高い集中力とこだわりにはひとつのものを昇華させる力があり、その人の強みにも成り得ます。
このように自閉症患者の多くにはその人個人による優れた能力があるので、その部分を伸ばす形で生活リズムを整えてあげたり、将来的に自立したりする時に役に立つことでしょう。
自閉症スペクトラムは、外見からは分かりにくい障害だからこそ、大人から誤解されてしまう子どもも多いです。
集団生活になじむことが難しく、大人から「躾がなってない」と思われる行動をすることもあります。しかし、その背景には、集団生活やコミュニケーションが苦手なことが隠れています。
大人が好ましくないと感じる行動をして、叱られ続けた子どもは自己肯定感が低くなってしまいます。保護者や学校などの知識不足でうつ病や引きこもりなどの二次障害の問題が出てくることもあるのです。
このサイトで紹介している放課後等デイサービスも、自閉症スペクトラム障害に詳しい担当者がいますので、保護者の相談にのってもらえると思います。効果的な指導も受けることができますよ。
自閉症のお子さんをもつ親御さんの意見をまとめてみました。
小学2年生で自閉症の息子がいます。知的障害はないので言葉はきちんと喋れるのですが、対人関係が苦手なようです。
1年生の頃から放課後は友達と一緒に遊べたことがなく、家に帰ってくると一人で好きなことやゲームをやっています。
スポーツクラブなどに通わせたいとも思ったのですが、ほかの子とうまく交流できそうにないので断念しました。他の子どもたちが集まって遊んでいるのを見ると、うらやましいです。
ゲームばかりさせるのは良くないと思いますが、自分でその日の課題をいちいち与えないといけないので、疲れてしまいます。(30代・女性)
息子が自閉症です。コミュニケーションがあまり得意ではなく、うまく友達をつくることができません。
塾や英語教育などを習わせましたが、続きませんでした。ですが、絵画教室だけは通っています。
ただボーッと周りの友達を眺めて終わる日もあるようですが、他の習い事に比べ「こうしなければいけない」という決まりごともないのが、長続きの要因かもしれません。(40代・女性)
習い事を断念したという意見もあれば、好きなことをヒントに自分のペースで続けられる習い事が見つかったという意見もあります。
お子さんにさまざまな活動を試してほしいなら、下記でご紹介する放課後等デイサービスの利用を検討してみるとよいかもしれません。
やはり、その学童保育・塾が「何人の自閉症スペクトラム障害の子供を受け入れたのか?」の実績を確認することが大切になります。
実績ゼロの場合、対応することができないことが多いため、親としては避けたいところ。いくら先方がOKを出しても、何があるか分からないため、どれだけ理想に近い教育をしてくれると感じても、じっくりと吟味するようにしましょう。
ご存知の通り、自閉症スペクトラム障害は、お子さん1人1人違う個性を持っています。1つの指導方針では、対応ができないことも多々あります。
そのため、個性に対して臨機応変な対応ができるか」を見極めることがポイントです。なかなか外から判断するのは難しいですが、塾内、学内に入って雰囲気を敏感に察知するようにしましょう。
何かあったときのサポート体制も問題なく機能をしているか?をチェックすることもポイントとなってきます。
自閉症スペクトラム障害のお子さんを受け入れている、学童保育・塾は非常に多いので、各々サポート体制を比較し、お子さんに合ったところを探すことが大切です。また親としても「こういった場合はどのような対応をしてくれるのか?」と積極的に質問することも大切です。
小学生~高校性の自閉症児は、障害児向けの放課後等デイサービスを利用できます。
放課後等デイサービスで具体的に何をするのかは、場所によって異なります。
学童保育のように集団でゲームや宿題などをして過ごすところ、コミュニケーション能力や社会性の向上のためのプログラムを実施するところ、スポーツや音楽などの習い事を行うところなどさまざまです。
他の子どもたちと一緒に集団で過ごすことになるので、自閉症児が苦手とするコミュニケーション能力や社会性を伸ばすために役立ちます。
また、自閉症児は突出した能力をもっていることがあるため、放課後等デイサービスでいろいろなことに挑戦させてもらっているうちに、思わぬ才能がみつかるかもしれません。
単に子どもを一時的に預かってもらえるというだけでも、自閉症児の親御さんにとってはかなり助かることなのではないでしょうか。
子どもが放課後等デイサービスへ行っている間に家事を済ませて、一人の時間を作ることができます。放課後等デイサービスを利用して、親子ともに充実した時間を過ごしてください。
このサイトでは、お子さまの発達具合がわかるWISC検査について解説しています。その結果を療育に活かしているおすすめの放課後等デイサービスも紹介しています。
お子さまの発達にあった療育を受けさせたいと思っている方は、ぜひ参考にしてください。
お子さまの発達がわかるWISC検査と
結果を活かす放課後等デイサービスをみる
子どもの特性が分かる発達テスト、WISC検査について解説
お子さんの受けられる発達検査のひとつにWISC検査があります。その子の持つ特性や発達の凹凸など詳しく数値として分かるのでおすすめです。5歳~16歳11か月の検査では、「言語理解」「知覚推理」「作業記憶」「処理速度」の4項目を調べます。結果をもとに指導に反映してくれる放課後等デイサービスもありますよ。さらに詳しく検査についてまとめたページがありますのでぜひご覧ください。