発達障がいの特性は大きく分けて3つありますが、それ以外にも正式には診断されないグレーゾーンのお子さんもいます。こちらでは、発達障がい、あるいはグレーゾーンの中学生、そしてご家族が家庭内だけで悩みを抱え込まないよう、特性別の困りごとや相談先について紹介していきます。
ASDとは「Autism Spectrum Disorder」の略称で、自閉症スペクトラム障がいと日本語に訳されます。社会的なコミュニケーションが困難であったり苦手であることや、行動やルールに対するこだわりが強いなどの特性が見られる発達障がいです。病気というよりも持って生まれた特性とも言えます。
コミュニケーションや社会性に関しては、相手の冗談や比喩、質問されている意図、暗黙の了解といった内容の理解が困難なため、クラスの雰囲気や学友、先生などとの人間関係を上手く構築できない傾向があります。
決まった手順やルールに強くこだわるため、柔軟な対応ができず、状況によって予定が変わったりするとパニックになりやすいのも特徴です。
ADHDは「Attention-Deficit Hyperactivity Disorder」の略で、日本語に直訳すると「注意欠如多動症」となります。この直訳どおり“注意が欠如していること”と“多動・衝動傾向”が主な特性となります。
注意欠如の特性として、気が散りやすく集中が難しいためケアレスミスが多かったり、忘れ物が多い、持ち物の紛失が多いなどがあります。また、スケジュール管理が苦手なために約束を忘れる、宿題を忘れることも多い傾向があります。
多動衝動性の特性として、順番を待つのが苦手であったり、同じ場所で落ち着いて過ごせないため授業中に体を動かしたり、座って居られずに立って動き回るなどがあります。
他にも、一方的にしゃべったり気分が高まりやすい、気にいらないことがあると衝動的な行動をしてしまうという傾向も見られます。
LDは「Learning Disabilities」の略で、文部科学省では「基本的な知的発達に遅れはないが、聞く・話す・読む・書く・計算する・理解するといった学習における能力のうち、特定のものの習得と使用に困難を示す状態を指すもの」としています。
知的障がいによるものでないことと、家庭環境や経済的な要因によるものでないこと、神経疾患や視覚などの障害によるものではないことに限り診断されます。
文章を読むのが遅く、読み間違えたりすることもあり、読んでいる文字や文章の意味を理解したりまとめたりするのが難しい傾向があります。
授業中に板書を書き写すのが極端に遅かったり、文字を書くことじたいが難しい場合があります。また、助詞などを上手く使いこなせず自分で文章をまとめることが難しいのが特徴です。
数や数字の概念が理解できず、数系列の規則性などの習得が難しいため計算が極端に困難であることが特徴です。
発達障がいにおける「グレーゾーン」とは、発達障害の特性や傾向は見られるものの、今まで挙げたような「ASD」「ADHD」「LD」といった診断名を受けるには至らなかった状態のことを指します。
グレーゾーンは診断基準に満たないとはいえ、ある程度の発達障がいの特性があることに変わりありません。グレーゾーンのお子さんはサポートの対象外となってしまうことで、教師や周囲から「不真面目だ」などと誤解されやすい傾向があり問題視されつつあります。
グレーゾーンは、特にASDの特性を持つタイプがなりやすいと言われており、下記のような困りごとが生じることがあります。
発達障がいの特性ごとの困りごとを紹介してきました。次に発達障がいを抱える中学生の場面別困りごとを見ていきましょう。
勉強に関しては、LDの特性をもつお子さんは困難なシーンが多くなります。数に対する概念が理解できない人は、単純な計算問題であってもクリアするのが難しくなります。
また、読字障がいや書字障がいを抱える人は、板書を書き写すことが非常に遅かったり、テキストや問題用紙に書かれている内容を理解するのに時間がかかるため、授業に付いていけなかったりテストの問題を解くのに時間がかかり点数を伸ばせないことも。
ASDやADHDの特性の人は、テスト用紙に名前を書き忘れたり回答欄をずれて記入する、といったケアレスミスが多い傾向もあります。また、優先順位をつけて勉強したり、スケジュールを管理して学習を進めることや、そのスケジュール事態を忘れることもあり、定期試験などをうまくクリアできない人もいます。
中学校では集団やグループで活動することがまだまだ多いです。グループを作って学習をする、体育ではチームに分かれて運動する、クラス単位での文化祭や体育祭、修学旅行といったイベントごとなどは友人とコミュニケーションを取りながら行動しなければなりません。
しかしASD やADHDの特性の人は、他人の考えや行動を読み取ることが苦手であったり、他人への興味が薄いために協調することが難しく、悪気なく別行動をとってしまうためにグループ内で浮いてしまうことがあります。
興味があること以外は無頓着や無関心になる特性の人は、洋服を適切に着こなせなかったり、髪の毛や爪を伸ばしっ放しにしているなど身だしなみができず、他の人から敬遠されることがあります。
学校や生活するうえでの大切な情報を覚えられず、約束を守れなかったり用意ができないことも。また、人混みや大きな音が苦手な人も多いため、満員電車に乗れなかったり、雷が苦手であったり、他人が怒鳴られているようなシーンであってもパニックを起こすこともあります。
発達障がいを抱える生徒が学校に相談する場合、まずは一番身近な教師である担任に相談するのが考えられますが、中には気が合わない先生や発達障がいの理解が薄い教師が担任になっているケースもあるかもしれません。そういった場合は、養護教師やスクールカウンセラーなどへ相談してみましょう。
スクールカウンセラーは、全ての中学校に配属されているわけではありませんが、近年は多くの学校に派遣されることが多くなっています。生徒の心のケアを行うことを目的としており、不登校や学習、人間関係、発達障がいに関する知識を持ちカウンセリングに応じています。
特別支援教育とは、発達障がいの特性を抱える生徒に対し、学校内外(例:福祉施設や医療機関など)の関係機関とチームワークやネットワークを構築し、子どもの学校生活をよりよいものにするための支援体制を整える人材のことを言います。
学校の外の機関に支援を依頼することもできます。「子供家庭支援センター」や「児童相談所」などのありますが、発達障がいに特化した支援機関としては「発達障害者支援センター」や「放課後デイサービス」などがおすすめです。
発達障がい支援センターは、発達障がいを抱える人へ総合的なサポートを行うことを目的とした機関です。 都道府県知事などが指定した社会福祉法人や特定非営利活動法人が運営していて、本人やその家族の悩みや問題を支援しています。グレーゾーンのお子さんでも相談することができます。
自治体の福祉サービスである「放課後デイサービス」を受けることもできます。お住いの自治体の障害福祉課にて、どのような支援を必要としているのか相談してください。
放課後デイサービスの施設はさまざまなタイプがあり、ゆったりとした居場所を提供するタイプや、ソーシャルスキルを育むプログラムを実施しているなどニーズに応じて紹介してもらえるでしょう。
中学生のお子さんが過ごす時間の半分は家庭であるため、親御さん自ら、お子さんの特性の理解を深めることが大切です。ASDやADHD、LDと診断されたとしても、環境や元々の性格などによってひとり一人少しずつ特性の出方は異なります。そういった個別対応に最も近い場所にいるのが親御さんだからです。
発達障がいの親御さんが情報交換や意見交換をしたり、勉強会などができる「親の会」などに参加して、悩みや情報をシェアすることは、親御さん自身の精神にとっても大切です。
発達障がいの特性を持つお子さんへの接し方を学ぶ「ペアレントトレーニング」を受けるのもひとつの方法です。ペアレントトレーニングは、医療機関や教育機関などの専門家を招き次のような内容を学びます。
社会的に発達障がいへの理解が進んでいる中、お子さんの特性を相談する場所は幾つも設けられています。こういった各機関は横のつながりとネットワーク力があるため、ひとつの機関に相談することで、お子さんの特性に合うような施設や相談先を紹介してくれる可能性が高くなります。
親子間だけで悩みや問題を抱え込まず、身近な学校や役所の福祉課などに相談をしてみましょう。
子どもの特性が分かる発達テスト、WISC検査について解説
お子さんの受けられる発達検査のひとつにWISC検査があります。その子の持つ特性や発達の凹凸など詳しく数値として分かるのでおすすめです。5歳~16歳11か月の検査では、「言語理解」「知覚推理」「作業記憶」「処理速度」の4項目を調べます。結果をもとに指導に反映してくれる放課後等デイサービスもありますよ。さらに詳しく検査についてまとめたページがありますのでぜひご覧ください。